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スーパーで紫蘇を手にしたものの「やっぱり…」と元に戻す高齢者。お花売り場で「高いねぇ…」とため息をつく高齢者。おばあさんが欲しかったのは、1枚の紫蘇、そして一輪の花です。そんなとき、ある構想が頭に浮かびました。もし『お一つどうぞ!お持ちになっていいですよ!」』そんな花壇が公園にあったらどんなに素敵だろうと…
面識もなかったのですが、園芸療法のスペシャリストである岩崎寛先生(千葉大学准教授:農学博士)の研究室の門を叩きました。すると驚いたことに岩崎先生も同じ構想を持っていたのです。そこで、私は岩崎先生から貴重なお話を聞くことができました。『見て、ふれて、香りを感じるといった五感を使って植物と関わることによって、人は心と体にかかるストレスを緩和できる。高血圧の人が飲む薬を低血圧の人が飲んだら大変!しかし植物との関わりから得られる効果は、高血圧の人は血圧が下がり、低血圧の人は上がる。つまり、 体調を元の健康状態(良い状態)に戻すことができる。森林浴や植物の効果は全ての人に効く万能薬。公園に花を植えたり、草花のお世話をする作業は、単に公園を綺麗にするだけでなく健康状態が良い状態になる。さらに緑と関わることによって自然治癒力を高めることができる』こうしたスペシャリストの貴重なお話から、ふと思い浮かんだ小さな構想が、大きなプロジェクトへと展開していきました。対象も高齢者だけではなく『すべての人』に!
子どもやお母さんの視点から
幼児を抱えるお母さんにとって、一日中『ダメ!』と言わなければならないのは、心が痛む問題です。幼児は、好奇心や探究心から手を伸ばすわけですから。「ここのハーブは摘んでもいいよ!」と言ってあげられることから、『何もかも全部ダメ!』ではなく『いいよ!』と言ってあげられる場も作る。レイズド・ベッド プロジェクトは、そんな役割も果たしています。
ハーブが作るコミュニティー
地域で最初に得られた変化は、高齢者の方が、ハーブを摘むのを楽しみに、公園まで散歩をするようになったことです。そして、高齢者の健康寿命を伸ばすために、もう一つとても大事なこがあります。それは『人と話をする』ことです。ハーブの周りに集まった人たちで、自然と会話が弾む。『お仏壇に一輪お花をいただきました』とにっこり笑うおばあちゃんの笑顔。
一輪の花が人と人を繋ぐ…
そしてこのプロジェクトには、さらに地域が抱えるゴミ問題が含まれています。花園公園レイズド・ベッドは、千葉市立稲毛附属中学校のアクティブ ラーニングの授業として、生徒たちが1年間かけて学び、討論し、煮詰め、そしてアイデアを出しあって制作しました。『不法投棄禁止!』『捨てるな!』の立て札と言った威圧的な解決策ではなく、『子どもたちがこんなに素敵な作品を作ってくれたのだから、この場所を綺麗に大事にしよう』そう思って欲しい。緊急事態宣言下でのアクティブ・ラーニング。ピンチはチャンス!生徒たちは地域社会に、そして自分自身の内面に目を向けることができました。
イノベーションによって私たちの生活は、どんなに豊かになったことでしょう。しかしコロナ禍で不安やストレスから、人々は癒しを求めました。そこで、疲れた心を豊かにしたものは、イノベーションではなく『一輪の花』です。一輪の花が持つ豊かさ。コロナによる多くの制限の中で、生徒たちは『本当の豊かさ』を考えるいい機会になったと思います。
大学、学校、自治会、あんしんケアセンター、高齢者をサポートする地元の企業… 多くの人たちの連携と協力のもとに、花見川区地域活性化事業として『花園公園レイズド・ベッド プロジェクト』が実現できたことを、皆様に深く感謝いたします。
制作:千葉市立稲毛附属中学校・花見川区地域の子どもたち
株式会社菊池建設(生涯現役を目指す後期高齢者の職人さん)
協力:花園自治会・花園あんしんケアセンター
監修:千葉大学 園芸学部 岩崎寛研究室
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